難民はISILじゃない.イスラム教徒はテロリストじゃない.~パリでのテロについて~

パリ 6か所で同時テロ 120人以上死亡
NHK 11月14日 15時07分
フランスの首都パリで日本時間の14日朝早く、コンサートホールやレストランなど少なくとも6か所で、何者かが銃を乱射したり爆発物を爆発させたりする事件があり、合わせて120人以上が死亡しました。フランスのオランド大統領は「前例のないテロだ」として非常事態を宣言し、警察は同じグループによる同時テロの疑いがあるとみて捜査しています。
”パリ 6か所で同時テロ 120人以上死亡”.NHK.2015.http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151114/k10010305641000.html,(参照2015-11-18)

すでにご周知の通りだと思いますが,先日13日夜(日本時間14日朝),フランスの首都パリで大規模かつ同時多発的なテロ事件がありました.このテロによるこれまでの民間人の死者は132人となっており,現地のメディアは「フランスで戦後最悪のテロだ」と報じるなど,極めて甚大な被害が出ています.ひとまずは死者のご冥福と,街や人々の傷が一日も早く癒えることを祈りたいと思います.

今回のテロ事件では犯人が難民に紛れて正規のルートでフランスに潜入し,凶行に及んだことが知られています.溺死したシリア難民の男児の写真がきっかけとなり,難民支援がにわかに盛り上がったのが今年の9月.その動きを受けて欧州が難民受け入れを拡大した矢先の事件でした.今回のテロを受けて,フランスを含む欧州全域で難民受け入れへの批判が急速に高まっています.
仏 同時テロ事件以降 難民受け入れ反対が増加
NHK 11月18日 14時04分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151118/k10010310801000.html


さて今回の記事では,テロを起こしたISILの狙いと,
難民支援が下火になりつつある現状について考えてみたいと思います.

ISILには世界中にシンパが居ると考えられています.実際のところシリアやイラクを主な活動地域としているISILのメンバーの大半は外国人戦闘員であり,今春の時点で欧州全体から3000人以上,フランス一国からも1000人以上がISILの戦闘員となるべく中東へ渡航していると推測されています.その気になれば世界中で要員が活動できるはずのISILですが,なぜ今回は難民に紛れ込ませるなどという遠回りな方法で戦闘員を派遣したのでしょうか.それはISILが「どこから戦闘員をリクルートしているか」を考えると見えてくるものがあります.

以前に弊ブログで書いた『「人道支援」がテロ組織を壊滅させる?』で詳しく触れていますが,実は
米総務省によるとISILに参加する若者のうち少なくない数が経済的理由での参加,より端的に言えば「テロ組織への出稼ぎ」であると見られています.これは特にISILに限った話ではなく,アル・カーイダやその他のテロ組織においても同様に,経済や社会に対する不満に付け込んで一般市民を戦闘員へと勧誘する手法を採っていることが知られています。つまり「貧困層や難民といった社会的弱者は,あらゆるテロ組織にとって格好のリクルート対象」なのです。同時に,「戦災による難民や不況によって職にあぶれた若者は,自身の生活のために非合法な手段に頼らざる負えない」とも言えます。

上記を踏まえた上でなら,勘のいい皆さんは私の言いたいことに察しがつくのではないでしょうか.難民などの弱者=リクルート対象が居なくなって困るのは,他ならぬISILなのです.
彼らが敢えて戦闘員を難民として正規のルートで潜り込ませた背景には,高まりつつあった難民支援運動を妨害し,難民流出を阻止する意図があったと考えると自然です.

難民に紛れてテロリストが国内に侵入したことを印象付ければ,それだけで難民受け入れのハードルは上がります.受け入れたとしても,国民の目線は腫れ物を触るような怯えを含むものになるでしょう.現実に欧州全土では難民支援に対する批判が,テロを受けて急速に高まっています.保護を受けられなかったり,あるいは社会的に居場所のない難民は,食い扶持を得るために非合法な手段に頼らなければなりません.このような難民と一般市民との分断工作こそがISILの目的であれば,その目的は十二分に達成されつつあると言ってよいでしょう.


そのような中で,私たちがすべきことはなんでしょうか.

ひとつは戦災地の難民支援を絶対に続けることです.難民支援の停止は,今生じている難民を見殺しにするばかりでなく,ISILを含むテロ組織の勢力を強め,将来にわたって被害を受ける人を増やす結果に繋がってしまいます.むしろこれまでの倍の支援をしたっていいくらいです.

その一方で,2015年の9月以降に起こったような安易な難民受け入れには口を酸っぱくして反対します.
自国とは価値観や文化の全く異なる難民を受け入れるには,衣食住はもちろんのこと職と教育の用意も必要不可欠です.逆に言えば,そのような受け皿を準備することなく難民を受け入れれば,今のように人々の反感を産み,新たな人道危機の火種を作るだけでしょう.実際に国連高等難民弁務官事務所は
ヨーロッパが差し迫った人道危機、それも、かなり自ら作り出した危機に直面している」とのコメントを出しています.

許容量を大幅に超えた難民受け入れによって水も食料も住居も不足し,受け入れを待つ難民は国境付近で夜露にぬれ,やひもじい思いを強いられます.また異文化のストレスや難民に紛れたテロの不安などから難民への風当たりは強くなってしまいました.そのような難民はマフィアのような地元の犯罪組織に加わったり,暴力的な方法に頼ることになり,治安の悪化にもつながります.
付け加えると難民の流入を防ぐために国境警備に今までより多くのコストをかけなければなりません.そしてこれらの負担はさらに難民への悪感情を増大させる悪循環となるのです.

つまるところ,安易な難民受け入れは難民支援どころではなく,かえって別の人道問題を発生させたのです.そして難民に対する風当たりの強まりは難民支援への無関心を生じさせ,テロや難民を取り巻く状況はかえって広い範囲で悪化したといってよいでしょう.自国への受け入れだけが難民支援の方法ではないのに,
ここで安易な難民受け入れとそれが引き起こす難民支援意識の急激な弱まりは,テロリストを利するだけというものです.繰り返しますが,難民を支援する方法は難民の直接受け入れだけではないのです.

ここで強調しておきたいことは,ISILは難民やイスラームの代弁者などでは決してないということです.難民はISILではないし,むしろそのようなテロや戦災から逃げてきた人たちなのです.イスラームだってテロリストではありません.その証拠にスンニ派最高権威の宗教機関「アズハル」や,シーア派を国教とするイラン・イスラーム共和国をはじめ,世界中のムスリムがISILとは違うということを強く宣言しています.
私は個人的にイスラームが好きで,その中には西洋的な思想とも相反しない,尊敬すべき発想が多くあることを知っています.そのイスラームがテロと同一視されると,とても悲しくなります.
何より重要なことは,難民はISILじゃない.イスラム教徒はテロリストじゃない」と改めて認識することではないでしょうか.

「人の心」を巡る現代戦争
http://dragoner-jp.blogspot.jp/2014/09/blog-post_19.html


戦禍に脅かされない平和で秩序だった生活に,多くの人が一日でも早く復帰できることを,心から祈っています。
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